最高裁判所第一小法廷 昭和25年(ク)107号 決定 1952年2月28日
主文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
現行法上決定に対する異議の認められるのは最高裁判所が特別抗告についてした決定(民訴四一九条の三、四一九条の二、四〇九条の四)、または再抗告裁判所の決定(民訴四一四条但書、四一三条、四〇九条の四)に対する場合だけであり、従つて高等裁判所が第一審または抗告審としてした決定に対しては異議の申立は許されないものと解すべきである。
けだし、訴訟法は判決を以て裁判すべき事項と決定を以つて裁判すべき事項とを截然と区別し、前者に対しては性質上比較的重要な事柄につき丁重な審判手続を規定したのに反し、後者に対しては原則として比較的軽微な事柄につき簡易迅速な手続を定めている。不服申立の点に関しても亦同様であり、判決に対しては、常に必ずその途が開かれてあり、しかも相当広範囲に丁重な控訴と上告の手続が認められている。これに反し決定に対しては本来不服の申立を認めない場合すらあるのであり(民訴二四条二項、四一条前段等参照)、そしてこれを認める場合においてもその範囲は極めて制限的であり各本条で特にこれを許すことを明規している場合と(同四一条後段、一二四条等参照)、概括的に「口頭弁論ヲ経ズシテ訴訟手続ニ関スル申立ヲ却下シタ場合(同四一〇条)とに限るのである(なお同四一三条、四一九条ノ二参照)。さて、民訴四〇九条ノ四が上告裁判所の判決に対して特に異議の申立を認めた所以のものは判決事項の重要性に鑑み、いわゆる「念には念をいれ」との見地に由来すること勿論であり、一見慎重に過ぎる嫌なきを得ない程の認定なのである。されば、かかる判決にのみ特有な不服申立に関する規定は、特別な明文のない限り決定に対してこれを準用すべきものとは解することができないのである。しかるに、本件の抗告理由は原高等裁判所が抗告審としてした決定に対しても異議の申立ができると解し、その申立を却下した原決定を非難するものであつて、畢竟民事訴訟法の誤解に基づき名を憲法違反に藉りるものにすぎないというべきである。
よつて本件抗告を不適法として却下し抗告費用については民訴八九条を適用し主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斉藤悠輔)